炊飯時の吸水とは
山の先輩に教えられた、「炊飯の吸水は30分以上」は 以前の記事に示す検証結果から、30分の吸水で約90%程度の吸水率である事から、「吸水は30分以上」は納得することが出来ました。
<前の記事から吸水率>
実際のお米の吸水率は、20~30%だそうですが、わかりずらいので 水吸収が飽和した時点を100%としています。
吸水率90%が30分なので、ほぼ30分で吸水が完了してます。1時間で吸水率が100%になるのですが、30分後からさらに30分待つなんて私的には無理な気がしてます。
この検証にて、「吸水は30分以上」を理解しました。
ただ、吸水30分で吸収率が90%ですから、加熱して水温が徐々に上がる時点で吸水率が100%になると思ってます。
吸水に用いる水の温度によって吸水時間はどう変わるのか
前回の検証時の温度は室温18℃、水温15℃での測定でした。お米の吸水率は温度によって変化するそうで、温度が高いと吸収率はアップし、温度が低くなるとダウンするそうです。
で、炊飯時の水温での吸収率と吸収時間を検証したいと思ってましたが、水温は時間と共に変化するので水温を一定に保つようにするのは恒温槽が必要だと思います。個人的に恒温槽などの設備もない私には無理だと諦めてました。しかし、旧Twitterでみつけました。日本調理科学会誌に投稿された研究結果で、「炊飯における温水浸漬と低温浸漬が米の吸水率に与える影響」(2015年)というタイトルの論文です。
<参考>浸漬とは吸水の事
ネットで見つけた論文資料
<論文のアブストラクト>
全7ページにおよぶ内容です。投稿者の所属は、「兵庫県立大学環境人間学部」です。
上記アブストラクトの画像をクリックするとPDFの全資料を閲覧する事ができます。
出典:日本調理科学会誌
論文中に見つけたグラフ
4ページ目に私が欲しかった「水温による吸水時間と吸水率」を示すデーター(グラフ)がありました。
この研究論文の目的は、吸水時の水の温度が低い(5~20℃)場合と、高い温度(30~50℃)で、時間60分程度で吸収率がクロスする事です。すなわち、グラフを見るとわかりますが、低温の方が飽和吸収率が高温より数値的に高くなる事です。同じ米なのに温度によって飽和吸収量がなぜ変化するのかを立証した論文内容です。
素人考えだと、高い温度のほうが低い温度に比べて吸収率がアップすると考えますが、何故かダウンするというのを立証されてます。
正直、この現象を立証して何に役立つんだろうと思ってしまいますが、論文中に炊飯器の吸水工程で「温水で米を浸漬することで急速に吸水させ,炊飯過程における吸水時間の短縮を図っている」などと記載されてますので、炊飯器の吸水工程のプログラム化などに役立つのかなと思います。
電気炊飯器、ガス炊飯器は、吸水から最後の蒸らしまで全自動なんですよ、皆さん知ってましたかー。
吸水の時には加熱を弱めて温度上昇を抑えているそうです。
<炊飯器(ガス)の工程>
ガス炊飯器も、最初の20分間は火力を弱めて吸水しています。「はじめチョロチョロ中パッパ、ジュウジュウ吹いたら火を引いて、赤子泣いてもふた取るな」の唄を聴かれた事があると思いますが、炊飯器もこの通りの工程で炊き上げているのがわかります。
参考までに、
用いた精白米は岐阜県産コシヒカリと兵庫県産コシヒカリ。
標準吸水率(%)= (浸漬後の米重量-浸漬前の米重量)(g)/ 浸漬前の米重量(g)×100
小型遠心分離器用いて遠心脱水。
温度維持は、低温は冷蔵庫、高温は恒温槽を用いた温度制御。
水温ごとに6P、吸水時間で9P 合計:6×9=54回繰り返し測定した結果ですので、データー取りは大変だったと思います。
グラフ 0~90分の範囲を切り取って吸水率100%に変換
個人的に私が欲しかった時間範囲は、0~90分なので240分のグラフから切り取りました。(左グラフ中の赤い点線で囲った領域)
そして、20%近辺で吸収率が飽和してますので、20%を100%として15%を75%、10%を25%、5%を25%としとして再グラフ化しました。
ちなみに、吸水率は通常20~30%だそうですが、わかり易くするために、私は吸水が飽和している時点で100%としています。
グラフを切り取って加工して再表示
EXCELで拡大してグラフを作成しましたので、少し見にくい点があると思います。
元グラフの吸水率20%を100%として縦軸を表示しています。
検証
①ネット情報では、寒い時期での吸水時間は2時間、暑い季節で1時間程度必要と書かれてますが、水温5℃の低温でも1時間程度でほぼ吸水率が飽和してますし、水温が5~40℃と変化させても吸水1時間程度で吸水率が100%前後と大きく変化してません。
従って、寒い冬や暑い夏など どんな季節であっても吸水時間は1時間でOKとなります。
この結果は意外です!
②グラフから20℃、30℃、40℃の曲線がほぼ同じです。
この結果から、水温20℃以上では吸水率がほぼ同じだという事です。
この結果もビックリしました。水温が高くなるほど吸水率がアップすると思ってましたので。
グラフから、20℃以上の水温であれば吸水時間を気にする必要が無く、「吸水は30分以上」を守ればOKとなります。
ただ、50℃は吸水率が更にアップしてますので、加熱する時に吸水率がアップすると思われます。
③グラフの中で88℃のライン(赤点線)を引きましたが、水温20℃では吸水時間は30分、水温10℃では40分、水温5℃では50分で、吸水率が約90%前後になります。
結果
水温を5~50℃と変化させても、どの温度でも約1時間程度で吸水率は飽和します。
どんな季節においても1時間の吸水で吸水完了となります。1時間以上の吸水は不要となります。
水温20℃以上であれば吸水時間は30分、水温10℃であれば吸水時間は40分、水温5℃であれば吸水時間は50分となります。
アウトドアにおいて、水温5℃はなかなか経験がありませんが、その場合でも吸水時間を50分と長く取ればOKでしょう。
吸水時間は
真冬なら50分、春秋なら40分、夏なら30分と覚えておきたいと思います。時間的に余裕があればどんな季節でも吸水1時間で吸水が完了します。
水温によって吸水時間は、30分から60分の範囲で調整すれば良いわかりました。個人的には結構満足できる結果となりました。
まあ、どんな水温でも吸水時間を60分とすれば全てOKではあるのですが。
この論文を書かれた方々に謝辞を述べたいと思います。
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